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私はお菓子の販売職をしていました。主な勤務地は鎌倉でしたが、時には系列のお店をお手伝いすることもありました。横浜の地下街でケーキを売ったり、羽田空港でお土産を売ったりと、いろいろな場所でいろいろな層のお客様を相手に仕事をしていました。立ち仕事であり、且つお客様のニーズを的確に捉えなければならない仕事ということで毎日のように心身ともに疲れていましたが、嫌いな仕事ということはありませんでした。お客様に満足してもらえるという充実感が、自分を支えていたのかもしれません。
ただ日ごろの仕事を通して疑問に思うことがいろいろあったのも事実です。勤続年数が長くなるに従って会社の内部が見えてきたり、上司の考え方が分かるようになって来るものと思いますが、私の場合は社長とのビジョンのズレを感じました。
新しく店舗をオープンさせるとのことで、社長は私にそのお店を任せてくださろうとしていました。とてもありがたいことで、私の両親も喜んでくれました。
私が休みの日に社長とお会いし、ふたりきりでそのお店についてあれこれと意見交換をしていたのですが、その際に社長、すなわち会社と私とのビジョンに明確なズレを感じたのです。社長はそのお店で大胆な試みをしようと思っていらっしゃいました。社長の得意とするところの「独創的なアイデア」を目の当たりにしたわけですが、それは私が入社当初に伝え聞いていたビジョンとはかけ離れているように思えました。それについて、私は素直に「素敵ですね」とは言えませんでした。それと同時に、日ごろから溜め込んでいた小さな疑心が私の心の表面に顔を覗かせるようになりました。「もうこの会社では自分らしく生きられないのかもしれない。」そう、思い始めました。 |
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